さて、３巻です。インプレッションは紹介の方にあるので早速本編に。
海賊波止場からスタートです。冒険は日常から…というのがセオリーかどうかともかくとして。冒険ばかりでは浮いてしまいますから、こういった休息から始まるのはいい感じです。
むろん、魔女ばばの家にカメラを移せば、ユーリの治療風景です。いつものことながら、その愛らしい風貌と痛々しい治療シーンのギャップに、なんとかならないかなぁ、と思ってしまうのですが…この傷自体がユーリの背負った罰だとすれば、ソレが許される日までは…。
おまけに、時光石の力が強くなっているとは…なんとかならないものか。
子供達に慕われるユーリ。でも、裏を返せば、子供達の成長に対して、別の時間軸にいることの悲哀を感じさせます。
しかし、そんなことを思っている間もなく。ノエルが騒ぎを起こしています。いや、ホント、恐いもの知らずの愉快な娘さんです。自分に自信とプライドを持っているのでしょうが。現実を知っているレニーにしてみれば、もう、船長を呼ぶしかないわけで。見ている方が大変（笑）。
で、ユーリはスマートかつエレガントに解決してしまうのですが（お約束のズボン落としがエレガントかどうかは…）。そこに惚れるオーガムもオーガムだな（笑）。まあ、今まで彼女に惚れる人が出てこなかったのが不思議なくらいですから、まあ、当然かも。
ここで、タイトルロール（笑）の海竜の話題が出てきますが…心臓に賞金？。なにやらきな臭い香りがしますが。ユーリは無視。人道的なのか、単に興味がないのか…？。
所変わって、オーデニア。海竜の心臓はこの人でしたか。人魚の肉もやっていたとは…なかなかのバカですな（笑）。しかも、ピップスのいい鴨。これでオーデニアがやっていけているのは、タットン将軍を始めとする部下がマトモだからでしょうなぁ。その、タットン将軍も真面目すぎて長くはなさそうな感じですが…。
夜のユーラスティア号。見張り台。レニーくんがノエルちゃんを意識していることがバレバレで、これではザーナンくんも大笑いでしょう（笑）。しかも、いきなりノエル登場だし（笑）。船乗り必須の星について勉強しようと登ってきたようですが。相手を見て、餌を持ってきている辺りが知能犯です（笑）。しかし、星座はこの世界とは違いますが、星自体は似ているようですね。しかし、口で言っても、星座はその線が見えるわけではないから難しいだろうなぁ…。
そして…何かを見つけるザーナン。南東から何かが聞こえる…。そして、時光石の反応も…。何の因果か、ユーリのゆく所、時光石が絡んできます。これが、運命なのか…。
やって来ましたペンタス諸島。岩場を抜けるために、ユーラスティア号も大忙し。…たまに、本で少ない人数でシップタイプの帆船を操縦しているものを見ることがありますが…不可能です（笑）。舵だけでは帆船は操船出来ないから（笑）。その点、この話は安心して読めますなぁ（笑）。
そんなどうでもいい突っ込みはともかくとして。ようやく海竜のお出まし。なんと、ザリア石のおかげで生き残った恐竜です。やはり、ユーリのゆく所、時光石の運命からは逃れられないようです…逃れて欲しい所ですが…。
もちろん、みんな海竜と戦おうとしますが、ユーリは手を出そうとはしません。…単にテリトリーを犯しただけでも敵とされるのが野生の定めなので、これはなかなか危険な話だとハラハラしてしまいます。あげくにあばれドクロ号が砲戦を仕掛けてきたとあっては海竜大暴れ。４本マストのシップが簡単に沈められるし。最悪。ゴアが戦闘態勢で守っているのが安心の種ですが。しかし、ひとり突っ走るザーナンが、ここでもキーパーソンとして活躍。彼のケルンで鎮めてしまいます。…音楽で鎮めるというのはよくある話だけど、何でじゃーと思っていたら。ケルンを吹くアザラシが現れて更に混乱。しかも、船縁を登るアザラシ…漫画の世界です。
そこで解答。アザラシの中身は海洋民族で、海竜を守っていたとのこと。ケルンは彼らが聞かせていたおかげなのですな。一気に論理的な解放が得られたこともびっくり。でも、挿絵みたいなアザラシの着ぐるみでケルンを吹いたり、船に上がったりすることの驚異は…（笑）。
ここで、戦闘メカ・ザブングルのハナワン族を思い出したりしたら、昔の人です（笑）。
話を聞いて大泣きするオーガム。…浪花節に弱いタイプみたいだったけど、そのものですな。いい奴です。ホント。勘違いと勢いで、損をするタイプかもしれないけれど（笑）。
そして、ザーナンと母親の再会。ザーナン、族長の息子ですよ。ある意味、王子様？。どうやら、ノエルやレニー（！）と引けを取らない立場のようで（笑）。
そんなことより、夜、母と子の再開を喜ぶザーナンや宴会に燃える大人達を横に置いておいて。しんみりしてるレニーとノエルのお二人さん。…優しい雰囲気の２人ですが。星の勉強の時以上にいい雰囲気なのは、二人が意識してないからでしょうか（笑）。いや、二人っきりだからですか。挿絵だけ見ていると、夜のデートのようです（笑）。
どんどん児童文学の感想から外れていきますが。ここで、もう一押し。オーデニア海軍の乱入です。ローデン王にいじめられてもけなげに従うタットン将軍がようやくやってきました。船団が大きいから大変な航海だったと思いますが、海賊波止場よりも近かったのが幸いしたのかお早いお着きです。
で、さっそくドンパチ…しようとしてゴアのバリア（ホントに無敵のボディガードです。逆に、ユーリのウィークポイントを背中の傷に絞ることが出来るのは彼のおかげとも）に阻まれて…結局白兵戦。旗艦を狙っての攻撃なのでユーラスティア号一隻でも何とか。おまけにあばれドクロ号の海賊もいるので、ユーリがタットン将軍に直談判できる所まで行ってます。
というか、オーデニア海軍も往年のイギリス海軍のように艦長は勇猛果敢に甲板で指揮を執らねばならないようですね。
で…前・ラムデン王に心酔しているタットン将軍。王と同じことをユーリに諭されて、さっさと改心してしまいます。もともとローデン王のやり方を好いていなかったのですから、当然と言えば当然ですが。まわりの部下が誰も同調してくれない辺り、彼の苦労が忍ばれます（笑）。日頃から、部下はしっかり鍛えましょう（笑）。
海竜が彼の副官に殺されたのも、暴れた海竜に対して他の船が一斉反撃に出たのも艦隊の規律が守られていないから…と言ったら言い過ぎでしょうか。副官なんて反逆罪で縛り首でしょうが。
それよりも、改心してなお王のことを気遣うタットン将軍が哀れです。この後は、良くて失脚。悪ければ牢獄行きかはたまた死刑か。あの王様に対してそれでも忠誠を誓い希望を捨てない辺りの人の良さ、甘さは、人としては美徳ですが、将軍としては…いいのか悪いのか。
結局、オーデニア海軍から海竜を守ってユーリは時光石の力を使い。ザーナンは海に落ちて行方不明。海竜の赤ちゃんは無事に孵化したものの。海竜自身も死亡。代償はあまりにも多かったようです。
そしてラスト。
半数に減った艦隊を連れて帰ってゆくタットン将軍。彼の物語は、あらゆる意味で今後の展開を左右することでしょう。どのような境遇に落ちようとも。っていうか、彼が積極的に暗躍しないと解決しない部分があるような…。
無事に発見されたザーナンを残し、海竜の子供を育てるべく去っていくリーウィー族。彼らに再登場の時はあるのか。海竜の育つスピード次第か。
ペンタス諸島の実家に帰るオーガム。…海賊１００人連れて帰ったら、家族もびっくりするでしょうが。彼も再登場すれば、心強いことでしょう。
でもってザリア石を手に入れた黒マント…彼が次の巻の直接のターゲットになるのかどうか。そして、日々強まる時光石の力については、この巻では全く解決していませんが。一体何が原因なのか。
しかし、毎回、時間と海をテーマにしたＳＦ的部分を話の中心に据えてくるあいたりアイデアの巧みさには、感心するばかりです。内容的にも、ザーナンの秘密を解き明かしつつ、お話的にはかなりの伏線を敷きまくっている、という感じで。もう、タイトルだけしかわからない次巻でのストーリーの進行方向が気になって仕方がありません。
レニー。タットン将軍。黒マント。現時点で、今後が気になるキーパーソンはこの三人ですが、彼らの誰かが次巻で主役となるのかどうかも気になる所。いや、そんな予想は軽々と覆されるような気もしますし。まあ、読者は座して待つだけですな。
そんなことより！（＜そんなことかよ）。今巻で計らずともノエルを意識していることを暴露してしまったレニー。なんとなく急接近しつつも、そういった方向に走りませんが。主役のユーリの恋がＳＦ的な壁に阻まれている（しかも年齢がみんな超高齢）のに対して、正真正銘お子様な二人の恋の進展具合に目が行ってしまうのはライトノベルの読み過ぎでしょうか（笑）。がんばれレニー。今回のザーナンに対するアドバンテージを次巻でも保てるか（笑）。
(2003.04.15)