『コメットさん☆』とは
このページ、一応ネタバレというほどの大きな情報は示していませんが、紹介ですので「解説」的な情報は入っています。ご注意を。
「コメットさん☆」。☆のマークは三代目、というのはとりあえず置いておくとして。この名前を聞くと、世代によって思い出す番組が異なると思います。1967年〜68年にかけて放映されていた九重佑三子さんによる最初のコメットさん。1978年〜79年にかけて放映されていた大場久美子さんによる２代目コメットさん。この二つの番組は「コメットさんという不思議な力が使えるお姉さんが宇宙からやってきて、お手伝いさんとして活躍？する」というコンセプトの元、全く違った設定で放映されました。しかし、両番組共にヒット作として当時の子供に影響を与えたようです。この文章を書いている私も２代目コメットさんの世代ですので、バトンを回すお姉さんとして頭の中にインプットされておりました。
故に、３代目コメットさんがアニメで登場すると聞いても、コレといって感慨を持つでもなく、実際、ＴＶを見たのも「たまたまその時間に起きてテレビをつけたから」という偶然以外の何者でもありませんでした。しかし、それが私にとって「意味のある偶然＝星の導き」であったことは確信が持てるような気がします。そんな気持ちにしてくれるのも、この作品の持つ限りない優しさゆえのことでしょう。
物語はトライアングル星雲という３つの星国に治められる宇宙（銀河）から。強大国タンバリン星国の王子に対してハモニカ星国、カスタネット星国の王女のどちらかをお妃にし、より強い繁栄を…というような裏の話はともかくとして、お見合いが開かれますが。王子が脱走。その逃亡先、地球へと二人の王女は追いかけていくことになります。ハモニカ星国の王女コメットは母親が地球に留学していた時の楽しい話を聞いていたために、王子様探しどころではありません。最初は遊ぶことに目が行きがちでしたが、「瞳に星の輝きを宿す者」と呼ばれる王子を探すため、人の輝きを追いかけているうちに…
といった感じでお話は進んでいきます。先代と同じく、基本設定である「お手伝いさん」「バトン」といった所を残してのオリジナルです。では、この３代目コメットさん☆が特別と言えるのはどこか？。
一つは物語の優しさ。全編を通して、作品を構成する物から優しさが感じられます。もちろん、それは生ぬるさではありません。時には厳しく、試練の連続となることもあります。現実の世界を生きているみなさんが感じているような重圧に潰される人たちも出てきます。それでも。この作品からは優しさが感じられてきます。それは、主人公のコメットさんの持っている物かもしれません。しかし、それだけじゃない。作品自体の持つ「空気」に触れて貰えれば、それがわかると思います。
そして、一つは豊かなキャラクター。特に、今回はコメットさんの直接のライバルとなるカスタネット星国の王女・メテオさんが登場します。これが、典型的なライバルキャラらしくコメットさんと全く反対の性格に見えるのですが。この個性豊かなお姫様がコメットさんと人気を二分するキャラクターであることからして、単純な「悪役」であるはずがなく、物語の中でも重要なファクターとなっていきます。
もちろん、コメットさんの居候先になる藤吉家の人たちもかなり変わっていて楽しい人たちですし、その他、個性豊かな登場人物達は一人一人にファンが付いたりしているほど生き生きしています。
そして、結構重要な点ですが。「王子様」というキーワードを入れることによって恋愛的なストーリーが発生します。これは２代目などでも単発のエピソードとしてはありましたが（なにしろ２代目は「愛」がテーマでしたし）、今回はヒロインに対する相手役というのが通しての構成として出て来るわけです。そして、恋愛イベントと同時に謎解きイベントにもなるわけで。シリーズとしての「流れ」を作っていきます。これが、結構、見ていてドキドキものでして。最後まで楽しませてくれます（笑）。
仕掛けとしては、声優さんに九重佑三子さん、大場久美子さんの元コメットさんを配置。主役に前作同様有名アイドルである前田亜季さんを抜擢。３世代に受ける形にしていますが。これが、単なる仕掛けで終わらず、亜季さん独特の柔らかい声がコメットさんの不思議な優しさを表現して、聞いた人を捉えて放さない状態に。コレばっかりはどう頑張っても文字で表せません。この「声」の魔力も一度聞いた人の脳髄に取り憑いてコメットさん☆という作品を際だたせる魅力の一つです。
他にも、この作品を構成する素敵に所をいくつもあげたいところですが、あまり調子に乗るとネタバレ一直線になってしまいますので、この辺にしておきます。
ともかく、見ていて心が静かになれる作品。この作品に接した時間は非常に実り大きいものであり、この作品を通じて多くのファンの人たちとも知り合えました。そういった広がりを当然のことのように思わせてしまう世界。そんな不思議な力がこの作品には満ちあふれていると思います。
ロボットが戦闘をしたり、ハードボイルドなアクションがあったり。そういった物を期待している人には退屈な作品に映るかもしれません。しかし。雨の日に雨粒を眺めながら和やかな気分になれる時を至福と感じる心があるのならば。一度、この作品をご覧になったらどうでしょうか。私は１話のラスト５分だけでも「見るに値する作品」かと思いました。レンタルビデオ店で１巻借りてくるだけでも十分その雰囲気を感じて貰えるのではないかと思います。
(2003.12.29)