こいつは傑作です。そう始めに言える作品に出会えた事は非常に喜ばしいことです。
この作品、どちらかというと、ネット上で話題になっていたのに対して興味を惹かれた、という、その頃では珍しいパターンでした。既にその頃ＴＶのデジモンアドベンチャー０２を見る様になったあとであり、公開は終わっていたのでソフトの発売を待たねばなりませんでしたが。
ストーリーは。
デジモンアドベンチャーＴＶシリーズの終了後の春休み。インターネット上に現れた新種のデジモン。データを食い荒らすツメモンに世界中の子供たちが気付く中、光子郎は太一のところに駆けつける。仲間たちと連絡を取りつつパートナーのデジモンと共に事態を収拾しようとするが…。
デジタルワールドではない、インターネットという現実の世界を舞台にしたこの作品は、ほとんど全てが現実世界とリンクした部分で語られています。パソコンの前で繰り広げられる戦い。そして、それ以前に厳しい現実との戦い。非常にリアル、というか身近に感じられる世界と感覚的にはとらえられても視覚的な違和感をともなう世界（ウルトラセブン「怪しい隣人」の異次元に通じるものがあるのかもしれない）。それらが、シリアスとギャグを織り交ぜて最終局面に向けて収束して行く様は、ある意味、鬼気迫るものがあります。
また、東映がデジタル処理に移行したあとの作品のために、全編フルデジタル処理になっています。が、それを逆手にとった様なインターネットの描写はなかなか見応えが有ります。また、ソフト化されたものが前作（劇場版デジモンアドベンチャー）に比べて非常にシャープなイメージになっているのもプラスに働いた点でしょう。
難点は、４０分という凝縮された時間ゆえに、またも８人の選ばれし子供たち全てを活躍させることはできなかった、と言うことですか。キャラびいきの人には、お気に入りが誰か、と言う点に於いて「……」という部分が多少あるかもしれません。が、少なくとも４０分間は外れに気付かせないだけのパワーのある作品だと思います。
2000年３月・「2000年春 東映アニメフェア」にて公開
2000年春 東映アニメフェア デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム！
| 企画 | 関弘美 |
| 原案 | 本郷あきよし |
| 監督 | 細田守 |
| 脚本 | 吉田玲子 |
| キャラクターデザイン | 山下高明、中山久司 |
| 音楽 | 有澤孝紀 |
| 製作 | 東映 高岩淡、東映アニメーション 泊懋、集英社 玉村輝雄、フジテレビジョン 三ツ井康、バンダイ 柴崎誠 |
ＤＶＤは「東映ビデオ」より発売（映画第１弾「劇場版デジモンアドベンチャー」と併録）。
映像特典として「細田守監督・関弘美プロデューサースペシャルインタビュー」「メイキング」「劇場予告」「ＴＶスポット」を収録
ＣＤは「NEC Inter Channel」より発売（ＴＶ版サントラ「デジモンアドベンチャー０２歌と音楽集Ver.1」に収録）。
参考書籍
ＤＥＧＩＭＯＮ ＭＯＶＩＥ ＢＯＯＫ（Ｖジャンプブックス／集英社）
［2001.01.23初版発行。スタッフインタビューやシーン解説等非常に資料的価値の高いムックです。「劇場版デジモンアドベンチャー」も収録］
2001.04.30