この作品、前半と後半でイメージが結構変わるために、人によって、それぞれに好き嫌いがあるみたいだけど、私はどっちも好きである。
前半のシュールなアクマリオとのシュールな戦いや、孤高のヒロイン・夏海ちゃんＶＳ何考えてるかさっぱりなヒロイン・ノエルちゃん、そしてダイナミックに変化する意味不明の演出。
後半の暴走するミューズちゃんと振り回されるノエルの家族たち（祐介、ミカエル含む）。ミカエル＆ラファエル、シルキー＆エロスの漫才。ノエルの覚醒、シルキーのヒステリー、ミカエルの暴走、家族の崩壊と雪崩の様に進行するストーリー。そして、祐介の決断。
いい話じゃないですか（笑）
さて。この話、構成要素が多いので、切り分けて見ようかと思ったけど、下手な解説みたいになったので、やめてキャラクター紹介調で。
前半戦
ノエル
ともかく、祐介のために天使になろうと頑張る。もう、純粋さと紙一重を武器に人の話も聞かずに頑張る。その動きの演出だけでも楽しいんだけど、実は前半は、あんまり活躍してないかも。演出とも相まって川上とも子さんの声が甘〜い。
祐介
なんか、恋人？と家族？がいっぺんに出来たものの、状況に振り回されるばっかりで、やっぱり活躍してないかも。
ディスペル
怪しいだけかも。と思わせといて、本気出すとすごい実力っていう。ラストは本当に意外だったと言うか。
ミルル
実は仕事に関しては頑張り屋かも。ディスペルとアクマリオをつなぐ中間管理職でアルバイター で不法滞在者。しかし、この声を聞いていると（飯塚雅弓さん：ちょうどこの頃、オーフェンリベンジで「あの」クリーオゥの声もやっていらっしゃった）、信用という言葉がどこかへ飛んで行ってしまった。
夏海
話を引っ張っているディスペルの作戦には関って来ないにもかかわらず、ノエルと祐介に与える影響っていう点では最も話を引っ張っていた人。祐介よりも情報を貰っている視聴者としても、時折見せられる彼女の引きずっている過去が一番気になる所だったのではないのだろうか。前半の最後はドリアン彗星とノエルではなくて夏海の過去話がメインになっていましたし。それゆえ、吹っ切れてしまった後半は「違う〜」という声が吹き荒れたのでしょう（笑）。
後半戦
パパ＆ママ
前半ではなんとなくだったママの本性が後半では爆発。パパは家族を巡って、この作品の中核に居るんですよね、本当は。
ミルル＆ガブリエル
この二人、ある意味落ち付いちゃったせいか、前半以上に影が薄くなっていますが、まあ、よろしいかと。ミルルの相変わらずの猫っぷりから、飯塚さんの声を聞くと信用度が…。
サーラ
本来なら、ミカエルと共に書きたい所だけれど。ミカエルがラファエルと対になっていたり、一人で暴走したりで、逆に、ちょっと寂しい立場になっていたような。
ルカ
エロスとのからみ以外、本当に影が薄かったというか。せめて、エロスの正体とからめて、ラストあたりでもうちょっと何かあっても良かったんじゃないかと。
バーバ
物語に関わっている人間？の中では、最も確信に近い所にいたのかも。結局、騒動の内部に居る人だから、一見無感心な傍観者のように動いているけど、一番能動的に何とかしようとしていたのかも。
シルキー
前半は意味のある出番が無かったけど、後半は女王様ですね。過去に何があったかはさらりと流されてしまいましたが。彼女に対する救済というのもストーリーの一つだったのかもしれない。けど、深くは描かずに想像させる所もこの番組らしいというか。
エロス
なんっつうか、救われない人、その１。彼がシルキーを救えなくて、誰が彼女を救えるのだろうか。ルカとの関係とか、もう少し出番があれば面白かったと思うんだけど。とくにミューズＶＳルカのエロスを巡っての直接対決とか。っていうか、ルカの出番が…。
ミューズ
エロスがシルキーを愛する人という存在なら、彼女はどういった意味で存在が確定されたのだろうか？。それはともかく、後半のストーリーを引っ張ったキャラ。彼女の活躍が正直後半の楽しみだったというか。困ったちゃんなんだけど、かわいいというか。それゆえにあの終わり方には納得行きませんわ。ラストカットはもう少しサービスがあっても…ねぇ。尺が足りなくなったのが響いたんでしょうか。救われなかった人、その２。絵的にも好き。
ラファエル
この物語の中で、ほぼ、傍観者でいられた唯一の人。しかしながら、天使学校の教官という設定以外、全てが謎。謎は謎でいいんだけどね。羽とか、冬雪との関係とか、ギターとアパートとか（笑）。場がなごむので、好きなんだけど、この人がもう少し能動的に動いていればねぇというのも。動けなかったんだろうけど。あとは、同人お姉さん方の間でもう少し話題になっていれば、作品人気も上昇したでしょうに（笑）。
ミカエル
いや、前半のいい人ぶりと後半の壊れっぷりのギャップはある意味シルキー以上というか。自分の価値観以外を認められない＆それを人に押しつける態度＆それに気付かないまで壊れているっていうので、もうダメじゃんってな感じでしたが。ノエルのおかげで更生出来たようですが、本当に彼が教師でいいのか？天使学校。
夏海
前半の孤高のイメージが一気に崩れて、ノエルやミューズに押されがちだったけど、物事決められない祐介に喝を入れられるのは結局彼女しかいなかったのかも。
ノエル
成長しない、純粋なままといわれていたものの、ラスト付近ではミカエルやシルキーと比べると、一番まともに見えて来るから不思議な物で。しかし、追い詰められて痛々しい後半でしたが、ヒロインとしての活躍は見事な物で。結局、家族も彼女を核としたものだったわけで、ラストではその追認が行われているし。シルキーやミカエルも彼女のおかげで救われたわけだし。でも、祐介には救われた…のか。
祐介
家族の希薄さに慣れていた彼にとって、魔界の家族はうっとうしい物が多かったんでしょうが。その彼が家族を再生させたのはノエルのためか、自分のためか。少なくとも、ラストまでで一つでも決めることができたのなら、物語開始時の情けない彼に比べて成長と言ってもよかったのではと。主役だけに、最後に決めてくれれば、見ている方も気持ちがいいというもので。
物語についてちょっと言うと。
ラストはハッピーエンドになって本当によかったです。
どう考えても、「シルキー、ミカエルと一つになって、天使になったノエルは天国へ帰って行きました。もう祐介とは会えないけれど、いつも空から見守っています」みたいなラストになりそうで。
でも、それって本当に「成長」ですか？
人類愛みたいな所へ持って行く話もありでしょうけど、それって、２６話かけてやって来たノエルちゃんの思い、みたいな物が空虚になってしまうと思うのです。私的にはそれじゃあダメじゃん、と言う訳で。
ゆえに、祐介君が根性を見せたラストを非常に評価しているって言うか、好きです。
逆に、もし、上記の予想のようなラストになっていたら、手持ちのＤＶＤを叩き割ったかも（放映中にＤＶＤが発売なるという、結構厳しい状況にあったわけで。だって最終回前じゃあ評価が確定しないんだもん）。いえ、ＤＶＤのライナーノートにアンハッピーエンドの方向に傾いていたってあったので、余計に安堵しています。
いや、本当にラスト３本なんて、展開がキツくて、見ていてドキドキしていた物でした。
ライナーノートと言えば、監督は最終回の大半をクリスマスパーティーにする予定だったそうで。実は、それを見て見たかったですね。実に残念。本当はＯＶＡでもいいからそういうのが１本出たらなぁーと思うわけですが、かなりカルトな人気の作品になってしまったようで、ちょっと実現は…。いや、錦織監督は天才演出家の一人だと思っていますから、今に出世して、再評価〜新作、という流れを作ってくれるかも、と期待しております。はい。
その折は、是非ともエロス＆ミューズの復活も、ということで。
2001.03.28