４巻です。アニメに比べて数に余裕がないかと思いきや、４巻にして早くも完全オリジナル作品。この巻あたりから、アニメの副読本的な立場から「何か」を補完するような漫画へと変わりつつあるのかもしれません。
カバー
大江戸城と新コスチュームのイサミちゃん。マントの「だんだら」が黒であるところがミソでしょうか。和風の雰囲気が今回の内容にマッチしています。裏表紙はアニメの黒天狗様。折り返しは読者コーナーの出張で、投稿イラストのカラー版になっています。そして、今回からカバー裏（裏表紙ではなく本当の裏）が設定資料のページに。今回は「大江戸市の地図」です。もう、ページ数は増やせないけど、情報密度はともかく上げようという編集さんの心意気が伝わってくる構成です。
単行本側の表紙はアニメの三人組。裏表紙はタイムマシンに乗るご一行様。本編からの抜き出しです。
扉＆登場人物紹介
扉は新コスチュームイサミちゃん。カバーが新コスのお披露目的な絵ならば、扉はいい感じにポーズを付けて読者アピールしています（笑）。登場人物紹介は…今回も本編の抜き書きのように見えて、主役三人はちゃんと描き下ろしです（笑）。細かいところにこだわってますねぇ。
第７話「タイムスリップ大作戦」
「新選組の子孫」という設定を軽やかに解釈した漫画。正に、アニメでやらなかったことを流れに沿う形でものにした作品とも言えるかと。非常に面白い試みかと思います。ただ、銀天狗の性格がアニメ版の「加山雄三」タイプからマッドサイエンティストになってしまったのは残念ですが。まあ、それは漫画版の「シリアスな流れ」という根幹に関わる問題なので仕方ないかもしれません。その分、タイムマシンなどという科学的にきつめのアイテムを持ち出しているので、「どこに重点を置くのか」という問題だけでしょうが。
で、今回の最大のゲストは坂本龍馬さん。新選組の時代に最も先進的な思想を持っていたと評される人です。現代から来たイサミちゃん達を支える人物としては理想的でしょう。個人的には、時期によって思想がバラバラで正体不明の人物、というイメージがあるのですが。思想の軽やかなこととイコールで結べるのかもしれません。ともあれ、日本を変える、という立場が坂本氏。
そして、それと対極にいる側として、もちろん新選組も出てきます。こちらは今の時代を守ろうとする側ですが。近藤勇氏をもってして、その思想をはっきりと語り、正しいとか間違いとかいうレベルの話でないようにまとめているのは気持ちのいいところです。龍馬主人公だとどうしても悪役に回らざるをえないのですが、イサミちゃんたちの先祖が属した正義の組織としてしっかり描いているのは好感。ただ、悪人を暗殺して回っているような言い方は間違いですよ、ソウシ君。彼らの第一目的は捕縛であり、実際にかなりの成果を上げているのですから。どうも、子供に教える歴史というのは明治維新政府の悪癖を引き継いでいるようです（笑）。あと、土方さんが陽気な乱暴者という描写はなかなかの新解釈です（笑）。ただ、だんだらの羽織は記号として必要だとしても。羽織の下に洋装をしているのはさすがに不自然ではないかと（笑）。
そして、ストーリーですが、歴史を変えるリスクと命の危険を押してまで近藤局長に直談判に行くイサミちゃんたちの心意気はさすがというか。この流れ、タイムトラベルものとしては結構珍しいのではないでしょうか。普通は、歴史改変の危機に怯えながら話が進みますから（笑）。
ともあれ、対照的な二つの勢力の魅力を描くことで、両者が敵対する秘密結社・黒天狗党の悪が鮮明になるというわけで。黒天狗党と戦うことの意義が強調される結果となります。
そして、その流れに新アイテム・新コスチュームの伏線が織り込まれるわけですから、恐れ入るところです。
そして、もう一つ。銀天狗の悪としての面と、完全に悪になりきれない面。それが、今後の激しさを増す戦いの中でどういう意味を持ってくるのか。四天王の一人として、非常に重要な点かと思います。
ラストで、現代の雑踏に消えていく坂本龍馬。自分の生きてきた時代の結果を見るための旅立ちですが、逆に言うと、現代の戦いには関わらないということで。それは、一つの時代を作った人たちから、イサミちゃんたち…ひいては現代に生きる我々が世界を託されているということに他ならないのかもしれません。大いなるロマンを残して…。
イサミくらぶ「大江戸かわら版」
今回も９頁。「浮世絵名人展」「浮世絵職人衆」「おたずね申す」「イサぴ〜」「イサミsoundぷろだくつ」は前回と変わらぬ構成。今回の目玉は「イサミちゃん参上！」ということで中嶋美智代さんのインタビューが約３頁に渡って掲載。そして、本編の裏側を描く漫画「おいてけぼりケイちゃん」が１頁。まさに、この本におけるケイちゃんのスタンスが爆発しています（笑）。そして「「MEGU」のみなさんありがとう！」ということで、アニメ誌MEGU10月号に２ページの記事が載ること、12月号から「大江戸かわら版増刊」が掲載されることが発表されています。
(2004.04.03)